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ディキシーランド・ジャズのボブ・スコビー Bob Scobey

ラジオからなんとも懐かしい音が聞えてきました。

ボブ・スコビー(Bob Alexander Scobey)の楽団が演奏する”Someday Sweetheart”という曲で爽やかなヴォーカルは多分ボブ・スコビーだと思います。
なぜなら、バンジョーで参加しているクランシー・ヘイズも歌うのですがクランシー・ヘイズの声はバリトンだと聞いているし、トランペットが聞えないからこの曲はボブ・スコビーです。

このハンサムなトランペッターがボブ・スコビー
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Frisco Band Favorites

スウィング時代から白人のトランペッターにはハンサムが多いです。
ハリージェイムスやバニー・ベリガン、コンテ・カンドリやチェット・ベイカーなどとざっとみただけでもこんな!

”Someday Sweetheart”は又の名を”Some Day Sweetheart”と呼ばれ、John Spikes & Benjamin Spikes兄弟が1919年に作詞作曲したディキシーランド・ジャズの曲だそうです。
※ディキシーランド・ジャズとはホットジャズとも呼ばれ、黒人が始めた南部のニューオリンズ・ジャズを1920年代から都会のシカゴで白人が真似た音楽だそうです。陽気なニューオリンズ・ジャズにギャングのもぐり酒場の暗さを加味したような曲が多いようです。
上記のアルバムには「Battle Hymn Of The Republic」が収録されています。この曲は題名の「リパブリック賛歌」というよりも「おたまじゃくしはかえるのこ」とか「権兵衛さんの赤ちゃんが風邪引いた」といった方が通りがいいでしょうか。

2002年にトム・ハンクスが主演した1930年代のマフィアを描いた映画「ロード・トゥ・パーディション(Road to Perdition)」のトーマス・ニューマン(Thomas Newman)音楽の人気のサントラにもボブ・スコビーではありませんが”Someday Sweetheart”の演奏バージョンが収録されています。ですがどのシーンなのか分かりませんでした。

ボブ・スコビーは1930年代から活躍したディキシーランド・ジャズのトランペッターで、主にダンスバンドで演奏していました。
1940年から1949年にはサンフランシスコのルー・ワターズ(Lu Watters)が結成したニューオリンズ風のWatter's Yerba Buena Jazz Band(ワターズ・ヤーバ・ブエナ・ジャズバンド)に参加し、サンフランシスコ・スタイルのディキシーランド・ジャズを創り出し、1940年代のウエスト・コーストでトロンボーン奏者のターク・マーフィー(Turk Murphy)などと共もにニューオリンズ・ジャズのリヴァイヴァルを推進した一人として知られています。ちなみに1941年から1951年頃に結成した楽団はアレキサンダーズ・ジャズバンド(Alexander's Jazz Band)という名前だったそうです。

ボブ・スコビーが参加したニューオリンズ・ジャズのリヴァイヴァルというのは黒人のジャズはニューオリンズで始まったのですが情勢が変って黒人たちは職を求めて都会のシカゴに流れました。ところがシカゴには白人が黒人のニューオリンズ・ジャズを真似たディキシーランド・ジャズが最盛だったのです。
一方、白人化したニューオリンズ・ジャズをより黒人のジャズに近づけようと推進したのが1940年代に起こったニューオリンズ・リバイバルなのだそうです。この演奏方法はフリスコジャズ(サンフランシスコ・ジャズ)と呼ばれたそうです。
そしてこんなことから職を失い人夫や農夫になっていたジャズメンを探し出して昔のニューオリンズジャズを復活させたのが本当の「ニューオーリンズ・リバイバル」で、代表的なミュージシャンはGeorge Lewis(ジョージルイス)だそうです。
Audio-Visual Trivia内のジョージルイスが書いたバーガンディ・ストリート・ブルースの記事でふれています。 Albert Burbank

1959年にはシカゴに自分のクラブ「Club Bourbon Street」を開店しましたが、その4年後の46歳の時、ガンで他界したのです。歌が上手いトランペッターで、おまけにいい男のボブ・スコビーは惜しいことに短命だったのです。

ボブ・スコビーが唯一映画出演したのはハーシェル・ゴードン・ルイス(Herschell Gordon Lewis)が監督した日本未公開の1961年の「Living Venus」という映画です。映画のテーマ曲の”Living Venus”の他、パーティシーンでは何曲か演奏しています。

Bob Scobey & Frisco Jazz Band in "Living Venus" 1961 - ok.ru (ビデオの終盤)

ハーシェル・ゴードン・ルイス監督といえば、ソフト・ポルノや、心臓の弱い方は見ないで下さいという「血の祝祭日(Blood Feast)」などのB級スプラッター映画で有名なんですが、ハーシェル・ゴードン・ルイスはバンジョーがお好きなようで1964年のTwo Thousand Maniacs!/2,000 Maniacs (1964) - YouTube(2000人の狂人) リンク先のビデオは過激な描写につき要注意!健全なる青少年の閲覧を禁ず。 
この映画でテーマ曲に自作の自演のマウンテン・ミュージックのバンジョー曲”Rebel Yell(The South's Gonna Rise Again)”を使用しています。

Bob Scobey sings Someday Sweetheart
私が聴いたボブ・スコビーが歌う”Someday Sweetheart”はワターズ・ヤーバ・ブエナ・ジャズバンドに参加していたウェストコースト・ジャズの歌手でバンジョー奏者のClancy Hayes(クランシー・ヘイズ)をフィチャーしたBob Scobey's Frisco Band名義のアルバムの「Bob Scobey's Frisco Band Favorites」にSweet Georgia Brown、St. James Infirmary、St. Louis BluesやAce In The Holeの他にBattle Hymn of the Republic(おたまじゃくしは蛙の子)などといった有名な曲の数々とともに収録されています。
※”Ace In The Hole”についてはブログ内の映画「地獄の英雄

「Scobey & Clancy Raid The Juke Box Featuring: Clancy Hayes」
クランシー・ヘイズをフィーチャーして、ブルーシーな”Yellow Dog Blues”の他、スタンダードの”Bye Bye Love ”や”Singing The Blues”などを収録したヒット曲集のアルバムも良かったです。

上記のアルバム同様にクランシー・ヘイズのバンジョーをフィチャーした「Direct From San Francisco」にはボブ・スコビーが歌う”Curse of an Aching Heart”や”Travelin' Shoes”などが収録されていますが特に”Michigan Water Blues”にはシビレました!

Audio-Visual Trivia のドビーの青春 The Many Loves of Dobie Gillisでマールボロ煙草の宣伝に出演しているボブ・スコビーの映像が観られます。
(Marlboro CM with Bob Scobey in Dobie Gillis closing )



by koukinobaaba | 2008-06-19 11:05 | 音楽
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