1950年代の終わりにヒットパレードを賑わせた曲の一つに美しいハーモニーで歌われた”トム・ドゥーリー”がありました。
英語は分かりませんでしたが、なにげにもの悲しい歌だったと記憶しています。 後で知って驚いたのは美しいメロディとは裏腹に血なまぐさい歌詞だったということ。 1866年に実際に起きた女性殺害事件を歌にしたノース・カロライナの民謡だとか。 Tom Dula(後にトム・ドゥーリーと呼ばれる)という南北戦争の退役軍人が恐らく交際があったと思われる女性をナイフで刺し殺して縛り首の刑になったそうです。 ところがトムは女性に危害を加えてはいないが刑を受けるに値すると告白したとかでなにやら謎めいた事件だったそうです。(実際はトムの愛人という別の女性の仕業とも......三角関係か?) この事件を元にノースカロライナのThomas C. Land(トーマス・C・ランド)が作った民謡は以前にも吹き込まれてはいましたが、1958年にキングストン・トリオのリーダーだったDave Guard(デイヴ・ガード)がアレンジしてLPに収録し、カットされたそのシングル(45 rpm)がビルボードで1位に輝いたことからアメリカのフォークソングとして世界中に知られるようのなったのです。 フォークといってもヴェトナム反戦やフラワー・チルドレンが現れる前のことです。 大ヒットした”Tom Dooley ”は翌年にTed Post(テッド・ポスト)が監督して「拳銃に泣くトム・ドーリイ」という西部劇になりました。 ただし、歌と映画は別物とも云われています。 テレビの西部劇シリーズだった「Bonanza(ボナンザ)」で知られるMichael Landon(マイケル・ランドン)が主演したトム・ドーリイ伝記映画「拳銃に泣くトム・ドーリイ」は3人組の駅馬車襲撃のリーダーだった若いトム・ドーリイのお話です。南部(レッドネック)側のトム等3人は北部(ヤンキー)の駅馬車を襲う命令を受けたが任務遂行時には南北戦争(内戦)が終わっていたのでした。戦争が終わって帰郷する兵士を乗せた駅馬車を襲ったわけですから彼らは殺人犯となってしまったので縛り首を逃れるために逃亡することになります。戦争では敵を殺せば英雄ですがそうでなければ殺人者となります。 銃撃戦で撃たれたトムの仲間を医者の家に運び込み手当を頼みますが拒まれて銃を突きつけているのを医者の孫に見られます。保安官たちに通報されて追っ手がやって来ます。 映画ではトムは戦争の間待っていた恋人のローラを父親の家から連れ去って牧師の家を訪ねると1ドルで結婚式を上げて貰います。立ち会い(証人)は牧師の息子、それが北軍の負傷兵。 二人は服を変えて逃亡する途中、ローラを取られたと怒って追ってきた横恋慕男と撃ち合いになりますが、運悪くローラの傍らにはガラガラ蛇が。 これで二人は不利となり銃をかまえる男に従わざるを得ません。このままでは縛り首。 一方、トムの残った相棒のカントリー・ボーイは故郷に帰ると別れたものの北軍のパトロール隊に捕われたのですが、トムの危機を聞いたカントリー・ボーイは馬の鞍に下がったホルダーから拳銃を抜くと縛られた手に持って脅してロープを切らせたのです。さらに他の男達を縄で縛るように命じ北軍の制服に替えてカントリー・ボーイは逃げる事が出来ました。この服装で檻に入れられたトムに会いに行き銃で脅して牢から出させます。 一時はトムと共に投獄されたローラですが、父の迎えで泣く泣く家に帰っています。 カントリー・ボーイはそのローラに馬で待ち合わせの場所に来るように伝えて、牢を出たトムたちも馬を駆ります。 馬のヒズメの音でローラが茂みから出ると、なんとやって来たのは横恋慕男。トムたちが到着した時にはローラは人質となっていました。カントリー・ボーイは撃たれたもののトムを助けましたが最愛のローラはトムに銃を取られた横恋慕男のナイフで刺されてしまいます。 歌の歌詞によれば、「山の上で彼女に会い、自分のナイフで刺して命を奪った」とありますが、映画では、ナイフを取り出したのは横恋慕男でトムと格闘になりましたがローラが刺されたシーンではトムが手にしていたような......ともかくトムを助けようとローラも加勢したので三つ巴の状態となりました。 ♪ この悲恋物語の冒頭とラストシーン、及び随所でキングストン・トリオの”Tom Dooley”が流れます。 私的にはキャラクター共々最後までトムを助けたカントリー・ボーイ役のRichard Rust(リチャード・ラスト)がかっこ良かったと思います。 白黒映画のビデオは輸入版のVHS「Legend of Tom Dooley」(ASIN: 6303393896)のみ見つかりますが、なんと二万円だそうです。 Throughout history There've been many songs written about the eternal triangle This next one tells the story of a Mr Grayson, a beautiful woman And a condemned man named Tom Dooley... When the sun rises tomorrow, Tom Dooley... must hang.. Hang down your head, Tom Dooley, Hang down your head, and cry... この時にはまだテレビが主流でなかった日本ではラジオから連日のように歌の冒頭に語りが入っているトム・ドゥーリーが流れていました。 ”ヘッダン・ヨ・ヘッド・トム・ドゥーリー ♪” 日本語の歌詞も付けられたそうですが、私はカントリー&ウェスタンの歌手が原語で歌ったのをジャズ喫茶で聴いただけでした。 The Kingston Trio - Tom Dooley (1958 Capitol records) with Lyrics - YouTube The Kingston Trio - Tom Dooley with Lyrics - YouTube Capitol Collectors Series by Kingston Trio ![]() 試聴はCapitol Collectors Series - Allmusic.com 上記のアルバムでキングストン・トリオが来ているストライプ(縦縞)シャツですが、後のThe Beach Boys(ビーチ・ボーイズ)が初アルバムで類似したシャツを着ています。(サーフィン・アルバムはチェック柄) アルバムの前半はチャート入りしたキングストン・トリオのオリジナル曲ですが、後半は1961年にリーダーが交代した時期のヒット曲で、Pete Seeger(ピート・シーガー)の”Where have all the flowers gone?(花はどこへ行ったの)”やTom Jones(トム・ジョーンズ)の”Try To Remember(想い出の九月)”などのカバーと全20曲を収録したCDです。 サンフランシスコで活躍したハワイに縁のあるキングストン・トリオというと、ウクレレだったDave Guard(デイヴ・ガード)がロングネックのバンジョー(Vega)も演奏し、ウクレレからすぐにアコースティックギターに変えたBob Shane(ボブ・シェイン)、テナー・ギターの他にパーカッションも演奏したNick Reynolds(ニック・レイノルズ)の3人組でした。 ”トム・ドゥーリー”以外にも”Tijuana Jail(ティワナの監獄)”やHoyt Axton(ホイト・アクストン)の”Greenback Dollar(グリーン・バック・ダラー)”のカバーなどのフォークソングがヒットしました。 ”トム・ドゥーリー”のヒット後の1961年にデイヴ・ガードが抜けてJohn Stewart(ジョン・スチュアート)がリーダーとなりましたが、キングストン・トリオのピークは過ぎ、1967年にジョン・スチュアートが去った後は解散してしまったそうです。 ジョン・スチュアートはThe Monkees(モンキース)の”Daydream Believer(デイドリーム・ビリーバー)”の作者として知られています。(I'm A Believer(恋に生きよう)ではない。) オリジナルのメンバーで存命なのはボブ・シェインだけですが下記のキングストン・トリオのオフィシャルサイトで写真が見られます。(ENTERをクリックするとメニューあり) The Official Kingston Trio Website Tweet
by koukinobaaba
| 2011-02-25 23:02
| 音楽
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