地獄の英雄 Ace In The Hole (1951)

1951年の「地獄の英雄」はビリー・ワイルダー(Billy Wilder)が監督したサスペンス調のヒューマンドラマですが、当時は過激な内容のため失敗作とされてきたが近年になって再評価された社会派映画です。
ジャンル分けではFilm-noir(フィルム・ノワール)にも入ります。

1934年にフランス映画の「悪い種子(Mauvaise Graine)」でBillie Wilderとして脚本家デビューしたビリー・ワイルダーは1944年のフィルム・ノワールの名作とされる「深夜の告白(Double Indemnity)」に続き、アカデミー初受賞となった1945年の「失われた週末(The Lost Weekend ))」を監督し、脚本家のチャールズ・ブラケットと共にアカデミーの脚本賞を受賞た1950年の「サンセット大通り(Sunset Blvd.」)の後に監督した作品です。この後はハリウッドのロマコメヒット作品が続きます。

Jan Sterling and Kirk Douglas in Ace In The Hole
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アメリカインディアンの古代の岩窟住居に生き埋めになったトレジャーハンター(盗掘者)の救出劇が、報道合戦のために画策した新聞記者により悲劇を生んだのです。生き埋めという悲劇にもかかわらず、メディアや宝探し男の妻や烏合の衆(見物人たち)はそれぞれある種の楽しみを見つけ出すのです。

「地獄の英雄」はマスコミの腐敗した部分を描き出して過激だったため映画が当たらず、映画会社のパラマウント(Paramount)がビリー・ワイルダー監督の許可なくタイトルを「The Big Carnival」に変更したという曰く付きの映画ですが、それも効果なくお蔵入りとなっていたそうです。
野次馬根性の一般大衆を糾弾するという観客を敵に回したような内容では終戦直後の50年代のアメリカでは理解されることは難しかったでしょう。
今現在は主要なメディアが新聞やラジオからテレビに完全移行しましたが、いわゆるヤラセとか、故意に作り上げられた映像は今現在でも批判されつつも連日のようにテレビでお茶の間に流されているのです。井戸に落ちた犬や子供の救出を見守る人々の心の内はいかに? 
他人の不幸は蜜の味。

カーク・ダグラス(Kirk Douglas)が一大スクープのためにマスコミを操るベテランの悪徳新聞記者のチャールス・テイタム(Chuck Tatum)を演じます。ベテランの新聞記だったチャックは一大スクープで巻き返そうとマスコミを操るのです。 インディアンのたたり!
新聞記者と同類ともいうべき被害者の妻のロレイン・ミノザ(Lorraine Minosa)を美貌のジャン・スターリング(Jan Sterling)が演じています。しがない安食堂とスタンドが生業だったミノザ夫婦でしたが、テイタムに乗せられてロレインが悲壮な妻を演じたものですから、見物人や報道陣が押しかけて店の売り上げがうなぎのぼり、自分の夫の不慮の事故を売り物にしても今の生活を変えたい願望を持つロレインとテイタムの似たもの同士は互いに反目しあって惹かれることなどはありません。ただの遊び。
この事件に便乗したのは新聞記者と、冴えない男との結婚は捨てて都会に出て新しい生活を始めたいと思っている埋もれた男の妻だけだはありません。選挙で再選されるよう人気取りりをしたい保安官、成功を夢見る若手ジャーナリストもテイタムのカーニヴァルに参加したのでした。後で操られていたと気が付いても手遅れ。

映画の冒頭は落ち目の新聞記者がトラックに牽引されてニューメキシコ州のアルバカーキの新聞社に到着するシーンです。以前所属していた大都会の新聞社を酒のためにクビになったとはいえ評判が高かったテイタムは高飛車な態度です。かっての新聞社に戻るためにここで名声を挽回しようと企みます。特ダネニュースなんてありそうもないこんな町だが、「もしニュースがなけりゃ、俺が野良犬にでも噛み付いてやるさ。」と新聞社のボスに自分を押し売りします。

気の毒を絵に描いたようといえば洞窟に生き埋め状態のままで牧師から臨終の祈りを受けたレオ(Leo Minosa)でしょう。 レオは別に英雄なんかにならなくてもよかったのです。 早く救出さえしてくれれば。 

映画の中で報道陣たちや見物人たちの野営キャンプが次々と増えていく様はカーニヴァルでも始まるようでこのようね事件現場には奇異に写りますが、その後、ニュースで聞き知った事故現場を訪れた観光客は何があるわけでもないので遊園地で遊んでいくのだとか。

※カーニヴァルもお祭り騒ぎという意味がありますが、この映画と共に”media circus”という言葉が知られるようになりました。 メディアが大騒ぎする「報道合戦」というようなことだそうです。

「地獄の英雄」の音楽はハリウッド映画音楽の巨匠ともいうべきヒューゴ・フリードホーファー(Hugo W. Friedhofer)の作曲です。テーマ曲はアルバム「Ace Ventura: Pet Detective」に収録されています。
多作を誇るヒューゴ・フリードホーファーは1946年に「我等の生涯の最良の年(The Best Years of Our Lives)」でアカデミー作曲賞を受賞しています。
Critics' Picks - Ace In The Hole - New York Times

Ace In The Hole Trailer - YouTube
Kirk Douglas as Chuck Tatum in Ace In The Hole - YouTube
Tatum and Mrs.Minos hate eachother in Ace In The Hole - YouTube
Leo Minosa gets Last Rites in Ace in the Hole - YouTube

レトロな手書きの「地獄の英雄」の映画ポスターが見られるAce In The Hole Poster - liu.edu

Hot'n Cool内のカーク・ダグラスの出演映画
呪いの血 The Strange Love of Martha Ivers
Audio-Visual Trivia内のカーク・ダグラスの出演映画
非情の町 Town Without Pity


Floyd Collins
「地獄の英雄」に類似した実話が1920年代にあったそうです。
クリスタルケイブ鍾乳洞(Crystal Cave)の発見者としてで有名な探検家のフロイド・コリンズ(Floyd Collins)が観光地にもなっているンタッキー中部の洞窟を調査するうちに地下16.76400 メートルの狭い這い通路に閉じ込められてしまい、この救出劇は世界のメディアの注目となりました。4日後には洞窟の崩落箇所への連絡が絶たれて声だけが唯一の頼りでしたが、14日後には汚染と飢えにより死亡したそうです。たて穴が掘られて現場に届きたのが3日後で遺体を回収できたのは約2ヶ月後だったとか。こちらはわざと救出を遅らせたわけではありませんがメディアの好餌となりました。

2001年に「チョコレート(Monster's Ball )」で主演したビリー・ボブ・ソーントン(Billy Bob Thornton)が監督及び主演してフロイド・コリンズの救出劇を2009年に映画するといわれています。


Ace In The Hole composed by Cole Porter
「地獄の英雄」の原題は英語で”Ace In The Hole”といいますが、トランプのポーカーで使われる言葉で意味は「最期の切り札」、「とっておきの切り札」、「奥の手」などだそうです。

映画とは無関係ですが、”Ace In The Hole”というタイトルの曲があります。
コールポーター(Cole Porter)がHildegarde Ranczakとのコラボで1941年にダニー・ケイ(Danny Kaye)が出演したブロードウエイ・ミュージカルの「Let's Face It」のために書いたそうですが、1943年にはボブ・ホープ(Bob Hope)が主演して」出画化されています。

”Ace In The Hole”はジャズのスタンダードとして何人かのジャズ歌手が歌っていますが、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)が1956年のアルバム「Ella Fitzgerald Sings the Cole Porter Songbook」に収録している他、アニタ・オデイ(Anita O'Day)やジョニー・マーサー(Johnny Mercer)とボビー・ダーリン(Bobby Darin)が歌っています。
Bobby Darin - Ace In The Hole - 1963 - YouTube

デキシーではターク・マーフィー(Turk Murphy)やボブ・スコビー(Bob Scobey)のバージョンがあります。
ボブ・スコビーはアルバムはBob Scobey's Frisco Band Favoritesに”Ace In The Hole”を収録しています。
過去記事はボブ・スコビー Bob Scobey
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by koukinobaaba | 2008-11-02 16:44 | 映画
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