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激しい夜 Les Menteurs (1961)

「激しい夜」は原作者のFrédéric Dard (フレデリック・ダール)が自ら脚本を手がけ1961年にフランスのエドモン・T・グレヴィル(Edmond T. Gréville)が監督が映画化したミステリー作品です。
フランス語の題名「Les Menteurs」の意味は「嘘つきたち」です。

フランスの推理小説家であるフレデリック・ダールの原作は1958年に映画化されたエドゥアール・モリナロ(Edouard Molinaro)監督の「絶体絶命(Le Dos au mur)」や1960年のロベール・オッセン(Robert Hossein)監督の「危険な階段(Les Scelerats)」などがあり、それぞれフレデリック・ダール自身が脚本を執筆しています。

「激しい夜」ではドーン・アダムス(Dawn Addams)が女優志望のノーマ、そしてクロード・ブラッスール(Claude Brasseur)が写真家志望のドミニクを演じています。ジャン・セルヴェ(Jean Servais)が結婚願望の大富豪のポール・デュトラスを演じている他、クロード・シャブロル(Claude Chabrol)監督がホテルの受付係りとしてカメオ出演しています。(分厚いメガネに縞々のベスト)

言語のタイトル”Les Menteurs”の意味が”嘘つきたち”という「激しい夜」のストーリーは若いカップルの悪巧みがとんだ結果を招くというミステリーです。
ドミニクは写真家志望、ノルマは女優志望という恋人たちはうだつが上がらず生活に困っていたところ、新聞に載っていた独身男の求婚広告に目を留めたのです。アフリカ帰りの独身大富豪ポールはフランスで余生を送ろうとパリから離れた田舎で暮らす予定で女手が欲しいと思い求妻広告を出したのでした。若いノルマが白髪交じりで眼鏡をかけた歳相応の中年婦人に変装して富豪の遺産を狙ったのです。こともあろうにドミニクが最初の結婚で儲けたノルマの息子という設定でしたがポールと結婚して豪邸に住むようになったノルマは安穏と暮らしていたのです。そこに痺れを切らせたドミニク足を骨折した息子として屋敷に乗り込んできたので。ギブスが偽物と知ったポールは盗聴したり覗きをしたりしてこの殺害計画を見破ってしまうのです。 「お前の眼鏡には度が入っていない」
ポールは友人の手を借りて悪企みを暴いた結果は、ノルマが盛った毒入りのポールの薬も水に替えられ、ポールとドミニクが出かけた後、毒を飲んだが死にきれなかったノルマ。「さようなら、デュトラス夫人」とポールはアフリカに帰ることにします。 
皮肉にもドミニクはヒッチハイクしようと道路に出て車に轢かれてしまうのです。悪いことはできませんね。

「激しい夜」の映画ポスターが見られるLes Menteurs - Cinema-francais.fr


エドモン・T・グレヴィル監督は「激しい夜」の前には、1930年にルネ・クレール(Rene Clair)監督の「巴里の屋根の下(Sous les toits de Paris)」にアルベール・プレジャン(Albert Prejean)の友人のルイとして出演したこともあるそうです。シャルル・アズナヴール(Charles Aznavour)も音楽に携わり「激しい夜」と同じくドーン・アダムスが漂流した看護婦役で出演した1959年の「狂った本能(L' Île du bout du monde)」や、当時新人のジョン・バリー(John Barry)が音楽を担当した1960年の「狂っちゃいねえぜ(Beat Girl )などを監督しています。
Beat Girl - YouTube

大富豪を演じたジャン・セルヴェはベルギー出身の性格俳優で、フランソワーズ・トリュフォー(François Truffaut )が最高のフィルム・ノワールだと絶賛したジュールス・ダッシン(Julius Dassin)監督の1955年の「男の争い(Rififi)」でギャングの親分を演じています。
この他には、1958年の パスカル・オードレ(Pascale Audret)が主演した「危険な遊び(Les jeux dangereux)」、ジャン=ポール・ベルモンド(Jean-Paul Belmondo)が主演した1963年の「リオの男(L' Homme de Rio)」などにも出演しています。
Jean Servais in Rififi (1955)- YouTube

ドーン・アダムスは「激しい夜」の前の1958年には同じくエドモン・T・グレヴィル監督の「狂った本能」でクリスチャン・マルカン(Christian Marquand)と共演している他、1959年にはブリジット・バルドーが主演した映画の「気分を出してもう一度(Voulez vous danser avec moi?」でベベの夫の浮気相手として出演しています。(リンク先のビデオでは最後に登場)

クロード・ブラッスールは1960年に「顔のない目(Les Yeux sans visage)」、1961年「何がなんでも首ったけ(La Bride sur le cou)」、1963年に「バナナの皮(Peau de Banane)」などに出演しています。


Les menteurs (feat. André Lafosse et son orchestre) [Original Motion Picture Soundtrack, Mono Version]
Les Menteurs / Love Blues - Fontana FON - 1017
Soundtrack by André Lafosse with Pierre Sellin
激しい夜 Les Menteurs (1961)_b0002123_174275.jpg
Les Menteurs ouverture et intro
Les menteurs (feat. André Lafosse et son orchestre)

大富豪のジャン・セルヴェを挟んで、右が本来の若い女優で左は中年女に変装したドーン・アダムス。
上記の画像は私が持っている「激しい夜」のサウンドトラックEP盤「Fontana FON - 1017」のジャケット画像はフランス盤と同じですがフランス盤は「Fontana 460 797 5cues」だそうです。
サントラの音楽はイラン出身のアンドレ・オッセン(André Hossein)で、アンドレ・オッセンは息子のロベール・オッセンが監督した「危険な階段」でも音楽を担当しています。「激しい夜」のサウンドトラックでは、クラシックに造詣の深いフランスのトロンボーン奏者のアンドレ・ラフォス(André Lafosse)指揮のオーケストラで、ヴィブラフォンと共にフランスのトランペット奏者であるピエール・セリン(Pierre Sellin)をフィーチャーしたジャージーなテーマ曲が使用されました。
とはいえ、A面のテーマ(Les Menteurs)では2分弱の曲で軽快なヴィブラフォンが通しで単調なフレーズを繰り返し、中頃にトランペットが入りますが強烈ではありません。B面のラヴ・ブルース(Love Blues)はトランペットで始まる4分ほどの緩やかな曲ですがブルースという感じはしません。
※ピエール・セリンはフランスのジャズピアニストであるマーシャル・ソラール(Martial Solal )の60年代のアルバムやジャズ・トランペッターのバック・クレイトン(Buck Clayton)のアルバムにも参加しているそうです。
☆「激しい夜」のサントラはもうありませんがアンドレ・オッセンの映画音楽集にテーマ曲が収録されています。





by koukinobaaba | 2008-10-30 00:18 | 映画
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