呪いの血 The Strange Love of Martha Ivers (1946)

1946年にルイス・マイルストン(Lewis Milestone)が監督した「呪いの血」は日本未公開の白黒映画です。
原題の意味は「マーサの奇妙な愛」ですがホラー映画ではありません。
しかし、ホラーでなくとも身震いしそうにおぞましいストーリーですが、なぜか哀しくもあります。

呪いの血
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配役は、主人公の成人したマーサ(Martha Smith Ivers)をバーバラ・スタンウィック(Barbara Stanwyck)が演じ、マーサと結婚する成人した家庭教師の息子のウォルター(Walter O'Neil)は当時デビューしたてのカーク・ダグラス(Kirk Douglas)で、マーサの母親代わりとなっている富豪の伯母のマーサ・アイヴァース夫人(Martha Ivers)にはジュディス・アンダーソン(Judith Anderson)です。マーサの幼馴染のサム(Sam Masterson)にはヴァン・ヘフリン(Van Heflin)で、サムの女友達のトニ(Antonia 'Toni' Marachek)にはリザベス・スコット(Lizabeth Scott)です。

Lizabeth Scott
リザベス・スコットは1945年の「You Came Along(大空に駈ける恋)」でデビューした翌年の「呪いの血」を手始めに、1947年にHumphrey Bogart(ハンフリー・ボガート)と共演した「Dead Reckoning(大いなる別れ)」を代表として、40年代と50年代にフィルムノワールのファムファタルを演じたブロンドのクール・ビューティでしたが1955年のスキャンダル訴訟事件以降は銀幕を遠ざかりました。 惜しくもRita Hayworth(リタ・ヘイワース)やLauren Bacall(ローレン・バコール)や「I Married a Witch((奥様は魔女)」のVeronica Lake(ヴェロニカ・レイク)にはなれませんでした。
リザベス・スコットは何本かの映画でもハスキーな声で歌っていますが最後となった1957年にElvis Presley(エルヴィス・プレスリー)が主演した「Loving You(さまよう青春)」の後にHenri René(アンリ・レネ)楽団とLPをリリースしています。

マーサの家出
1928年のこと、アイヴァース家が代々支配するペンシルバニアのアイバースタウン(Iverstown)でこの物語が始まります。四度目に家出したマーサはお巡りさんに見つかって冷酷な伯母の家に届けられたのです。一緒にいた友達のサムは上手く逃亡しました。

ヒロインのマーサ・スミス・アイヴァース(Martha Smith Ivers)は、名家の伯母のアイヴァース夫人の相続人ですが、夫人の妹身分の違うが貧しい労働者との間に儲けた子供だったのです。よって、アイヴァースは母名、スミスは父名です。

口喧しくてマーサの亡き父を侮辱する伯母をマーサは嫌い、遊び友達のサムの助けで伯母の家を4回も家出しようとしていましたが成功したことはありません。今回、貨物車に潜んでいたところ警官に見つかったのは、家庭教師のオニール氏の優秀な息子のウオルター・オニールが密告したからです。
強欲なオニール氏が息子のウォルターのハーバード大への奨学金を得るために夫人にゴマをスルためでした。

伯母殺害事件
マーサが遊び友達友達のサムに頼んで持ってきて貰ったペットの子猫を伯母が杖で叩いたので、それを止めようと杖を取り上げて伯母を夢中で叩いたらマーサが驚いたことに階段から落ちて死んでしまったのです。サムはその時すでに窓から出て行きましたが、家庭教師の息子のウォルターは部屋にいました。故意に殺したわけではありませんが、不味い事態と判断したマーサとウォルターの二人はオニール氏には見知らぬ男がやったことだと嘘をつきます。 

共犯者たち
お気に入りのサムと再び逃げようと計画していたマーサはこの突発事件に行かれなくなってしまったのです。オニール氏は子供たちの嘘を見抜いていたのですが、己の欲のために肯定して伯母亡き後のマーサの後見人となってしまうのです。これ以降はオニール氏の暗黙の威圧により共犯者意識を持ったマーサは意志の弱いウォルターと結婚まですることになりました。

子供たちはその後
時は経ち1946年のこと、あの事件から18年後にはいっぱしのギャンブラーとなったサムは偶然に懐かしいアイバースタウン近辺を車で走行していましたが、不注意で杭にぶつけてしまい車を修理に出すはめになりました。その修理屋で聴いたラジオ放送マーサの声を聞いたのです。サムはマーサがあの家庭教師の息子のウォルターと結婚してたことを知ります。

サムとトニとの出会いと幼馴染との再会
この後、サムはバス停留所に向かうトニという女にに出会います。バスに乗り遅れたトニを親切で自分のホテルに泊めたところ、トニは無実の窃盗罪により保護観察中の身で、その違反により捕まってしまうのです。その時、偶然新聞で見たのは今や地方検事となったウオルターの写真でした。 サムはトニを救おうとウオルターを訪ねたのですが、ウオルターはサムが例の事件のことでマーサと自分をゆすろうとしていると早合点してマーサにそう焚き付けてしまうのです。
その誤解が子供時代の友達をあの悲劇の夜の真実と、マーサとウオルター夫妻の関係の秘密を暴くことになるのです。

マーサの思惑
ウォルター家を訪ねて来たサムに喜んで家中を案内するマーサ、唯一変えていなかったのがサムが窓から出入りしていた昔のマーサの部屋でした。何を考えているのか、マーサは「なぜ、この町に戻ったの?」と問いただしたり、挙句にはサムにモーションをかけるのです。やはり、ずっとサムを想い続けていたのか。が、まるで相手にしないサムです。ウォルター夫婦はマーサの幼馴染のサムのことを17年前の伯母殺害の唯一の生き証人と思っているのですが、実はサムは窓から出て行った後に起こったことだったので事件のことは知らず終いだったらしいのです。
一方ウオルター氏は過去にマーサの伯母殺しで裁判にかけられた無実の男に検事として死刑を求刑しその男は処刑されてしまったという自責の念にかられ、マーサはウォルターよりサムを想っているしで、現在はアルコール依存となっています。
サムへの権勢留置所がら出てきたトニを待っていたサムは助けてくれそうなオニールの話をする。しかし何かを恐れているように落ち着かない様子のトニ。そこへ突然トニの夫と名乗る男が現れてサムを外へ誘うと彼らに続く男たち。トニは外の車の中で激しく殴られているサムを見ますがトニは刑務所には戻りたくありません。場面目変わってやっとこさで溝から這い上がったサムの手にはなんと刑事の胸バッジが。
バスに乗り込むトニを捕まえて先ほどの暴行の訳を知るとサムはオニール宅へ向かいます。そこからサムは過去の伯母殺害事件の調査を始めますが、サムのホテルにマーサが訪ねてきて事件の申し訳をするために二人はクラブや森にに行きます。しかし帰りの車内でキスする二人を見たトニは出て行ってしまいます。
サムと別れて家に戻ったマーサは酔っ払ったウォルターが「すぐ来い!」とサムを電話で呼び出している場面を目撃します。

奇妙な夫婦
電話で呼ばれたサムがやって来ると激しく言い争う夫婦でしたが、ウォルターはへべれけで階段を落ちてしまいます。それをマーサは「酔っパラっているから簡単よ」とサムをそそのかすのです。憮然としてウォルターを抱き上げて部屋に運ぶサムが言ったせりふは、「マーサ、君は病気だ。」 すると引き出しから拳銃を取り出すマーサでしたが、やはりサムは撃てません。サムは家を出て行ってしまいます。マーサの落とした拳銃を拾ったウオルターはマーサの腹にそれを突きつけるのですが、サムに逃げられたマーサは「愛しているのは貴方よ」とその拳銃の引き金を引かせたのです。発砲の音を聞いたサムは慌てて駆け戻ろうとしたのですが窓越しにマーサを撃った後、続いて自殺するウオルターを見たのでした。なんてこった!

とんだ思いをしたサムがこんな所はオサラバとホテルに戻って荷造りしていると、なんともう発った筈のトニが「バスに乗り遅れたわ。”2度の幸運” ♪」と戻って来たのです。二度と過去はふりかえりません!



※「呪いの血」を監督したロシア出身のルイス・マイルストンは、1932年にジョーン・クロフォード(Joan Crawford)とウォルター・ヒューストンでサマセット・モーム原作の「雨(Rain)」を映画化したのをはじめ、1939年に廿日鼠と人間(Of Mice And Men)、1948年にレマルク(Erich Maria Remarque)原作の凱旋門(Arch of Triumph)や1960年のオーシャンと十一人の仲間(Ocean's Eleven)などの話題作品を監督しています。



※複雑な環境に置かれたマーサを演じたバーバラ・スタンウィックはいわゆる男を惑わすファム・ファタル役が多いですが、妖艶というほどアクが強くはありません。 1930年から1960年頃までたくさんの映画に出演していますが、私が知るところでは1941年にゲイリー・クーパー(Gary Cooper )が主演した群衆(Meet John Doe )や教授と美女(Ball of Fire)の他に、ビリー・ワイルダー(Billy Wilder)が監督した1944年の深夜の告白(Double Indemnity)などがあげられます。

一方、とても新人とは思えない堂々とした演技のカーク・ダグラスはロシア系アメリカ人の俳優で、俳優養成所ではローレン・バコール(Lauren Bacall)と同期生だったとか。非情の町(Town Without Pity)や活劇ものが多かったカーク・ダグラスが出演して高評を博した芝居の「One Flew Over The Cuckoo's Nest(カッコーの巣の上で)」は映画化に至らず、後の1975年に父の意思を継いだ息子のマイケル・ダグラス(Michael Kirk Douglas)によって映画になったという経緯があります。

伯母さま役がぴったりのジュディス・アンダーソンは1946年に歌手のジュリー・ロンドン(Julie London)が出演したミステリー映画「赤い家(The Red House)」でもピータ-・モーガン(エドワード・G・ロビンソン)の秘密を知るをヒロインの伯母を演じています。「赤い家」の監督はデルマー・デイヴィス(Delmer Daves)ですがヒッチコック映画のように不気味で怖いストーリーです。これらより以前のアルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)監督の1940年のレベッカ(Rebecca)では新妻が恐れる前妻の付き人を怪奇に演じていました。



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by koukinobaaba | 2008-09-03 01:15 | 映画
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