髪結いの亭主 Le Mari De La Coiffeuse (1990)

英語のタイトルが「Hairdresser's Husband」という「髪結いの亭主」はパトリス・ルコント(Patrice Leconte)がGeorges Simenon(ジョルジュ・シムノン)の原作を映画化した1989年の「仕立て屋の恋(Monsieur Hire)」に続いて1990年に監督した”ひたむきな男の恋”を描いた映画です。幸せって何だろ?と考え込んでしまう結末ですが、妻の死を現実と認めていない夫の動向をみると結局はこれで幸せなのかとも思えます。非現実的ですが、”永遠の愛=死”の図式の一例でしょうか。
美しいままの私をずっと愛してね。この幸せを永遠のものに。

日本の落語に出てくる”髪結いの亭主”とは奥さんの働きで”遊んで酒を飲のでいるような最低な旦那”だそうです。やはり映画のなかでも働いていませんね。ニンマリと働いている奥さんを見つめたり踊ったりしています。たまにはおさわりも。

Le Mari De La Coiffeuse - YouTube

ジャン・ロシュフォール(Jean Rochefort)は、フィリップ・ド・ブロカ(Philippe de Broca)監督のお気に入り俳優であり、パリのコンセルバトワールでジャン・ポール・ベルモンド(Jean-Paul Belmondo)と知り合いだったことから、1961年の大盗賊(Cartouche)、1963年のリオの男(L'homme De Rio)、1965年のカトマンズの男(Les Tribulations d'un Chinois en Chine)などの他にも何本もフィリップ・ド・ブロカ映画に出演しています。
又、2000年に制作されるハズが災難続きで中止となったドンキホーテを殺した男(The Man Who Killed Don Quixote→Lost In La Mancha )の主演に予定されていたそうです。

Unfinished Terry Gilliam Film with Johnny Depp and Jean Rochefort - YouTube

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一方不可思議な女心で観客を惑わせた豊満なマチルドを演じたのはAnna Galiena(アンナ・ガリエナ)でした。アンナ・ガリエナは1954年にローマで生まれたそうですから「髪結いの亭主」に出演した時は36歳だったのでしょう。舞台からこの映画に出演して世界的に知られるようになりました。
1994年にBill Forsyth(ビル・フォーサイス)監督の「Being Human」でハリウッド・デビューを果たしたものの映画が大コケで成功ならず。この映画はRobin Williams(ロビン・ウィリアムズ)が主演し、アルバレスを演じたEwan McGregor(ユアン・マクレガー)が長編映画デビューしたのですが、主人公と恋に落ちるFriulan(北東イタリア)のベアトリス役で出演した母国語のイタリア語の他に英語とフランス語が話せるアンナ・ガリエナは北東イタリアで話されるラエトーロマンス方言の台詞だったとか。
アンナ・ガリエナは「髪結いの亭主」の前の1986年にはイタリアのミラノにある某ファーストフード店の一日を描いた「Italian Fast Food」に出演しています。これは80年代にテレビで放映された2時間番組の「Drive In」をもとにしているのだとか。
アンナ・ガリエナが登場するシーンは少しですが、インパクトのある長いブーツのSM女王様姿で鞭をふるいます。

「髪結いの亭主」では中年になって念願の女床屋と結婚する主人公が子供時代にいやいや着用していたサクランボのボンボン付き赤い毛糸の水着が印象的です。
商売物のヘアーとニックで作ったカクテルを二人で飲むシーンも変ですが、大変興味深いのは主人公の音楽の好みです。冒頭の子供時代のシーンでも踊っていたのですが女床屋の旦那になってからも、そして女房が死んだ後でも同じような曲をかけてアラブのダンスを踊るのです。この中東のポピュラー音楽をかけると、髪結いの旦那が踊るなんとも鬼気奇怪なアラブ風ダンスは映画を観終わってもずっと残ってしまいました。
Arabic Dance by Jean Rochefort - YouTube

「髪結いの亭主」の効果的で美しい音楽は「仕立て屋の恋」と同じマイケル・ナイマン(Michael Nyman)ですが、上記のアラブ音楽も収録されているサウンドトラックが人気です。1992年に発売された国内盤は「髪結いの亭主」

Le Mari De La Coiffeuse -Michael Nyman -Soundtrack
Le Mari De La Coiffeuse
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(唯一試聴が見つかったロシアの音楽サイトは消滅しました。)

※上記のサントラ内に収録されたアラブ音楽:
Rabab(曲はKhaled Zaid、歌詞はEl Emir Faical/Ben Yazid)のSaffak Alik(私の心は愛で熱く熱くなりました)はラストシーンで亭主が踊ります。
Saffak Alik - YouTube
Racheb Alame(Abdel Rab-Adris/Kim Al Baoudi)のWadana-Wadana(私はここにいる)は結婚式のシーンで流れました。
Racheb Alame - Wadana-Wadana - YouTube
Rabab(ラバーブ)演奏のYa-Ourra(自由な女)

Fairuz(Raharani Brothers)のSa Alouni Annais(私の人生を捧げよう)
Fairuz - Sa Alouni Annais - YouTube
Racheb Alame(Ragueb Alama/Toufik Bourrkan)のYa Rit Fiya Kabbiha(誰にも言えない秘密)

※”Rabab(ラバーブ)”とは?
アフガニスタンのバイオリンに類似した民族楽器はRabab( ラバーブ)
Racheb AlameもしくはRacheb Alame(ラチェブ・アレーム)はレバノンのポップス歌手
Fairuz(フェイルーズ)はアラブの女性歌手
※以上不明な点があります。


☆ついでに私の好きなTitoの踊るアラブダンスはTito Egypt's male Oriental/belly Dancer
Tarik Sultan - Morocco - YouTube
Egyptian Dancer - YouTube

☆ちなみにフランス語のタイトル”Le Mari De La Coiffeuse”のCoiffeuseというのは”coiffeur(男性ヘアドレッサー)”の女性形です。単に”coiffure”というと女性形の名詞で髪形(ヘアスタイル)や結髪を指します。

Senso '45
アンナ・ガリエナの話題作品は2002年にEnnio Morricone(エンニオ・モリコーネ)が音楽を手掛けたTinto Brass (ティント・ブラス)監督の「Senso '45(ティント・ブラス 秘蜜)」です。
次第を第二次世界大戦が終わろうとする1945年に移したこの「秘密」はLuchino Visconti(ルキノ・ヴィスコンティ)が1954年にAlida Valli(アリダ・バリ)主演で映画化した「Senso(夏の嵐)」のリメイクですが、「Caligula(カリギュラ)」などエロで有名な監督なので狂気で濃い内容です。「髪結いの亭主」から12年経過して48歳となったアンナ・ガリエナはイタリアの上流階級の夫人役で熟れ切った肢体を惜しげ無く晒しています。(どこまでも見せます)
愛情を持てない夫にうんざりした生活から当時イタリアに台頭していたナチスの親衛隊(ドイツ軍中尉)と色濃い沙汰になるのですが最後は裏切られる哀しい中年女を演じています。
デカダンか?色気違いか?
将校のヘルムートを演じるちょっとBarry Pepper(バリー・ペッパー)似のGabriel Garko(ガブリエル・ガルコ)がヤバいほどセクシー。間違った角度で見るとちょっとThe Addams Family(アダムス・ファミリー)のLurch(Ted Cassidy)。
身長が190cmというガブリエル・ガルコは1974年頃にイタリアのトリノで生まれたTorinese(トリノ人)で1991年にミスター・イタリアの栄光に輝いたとか。その後、テレビの昼メロなどに出演してから映画に移行し1998年の「Paparazzi(パパラッチ) 」をはじめとして、2002年にティント・ブラス監督の「秘密」に出演したそうです。イタリアのジョニデか! 今後の活躍が楽しみです。

ティント・ブラス監督といえば1968年の「Col cuore in gola(危険な恋人)」はともかく、1980年の「カリギュラ」以降は1994年の「L'uomo che guarda(背徳小説)」など背徳シリーズなどでかなりエロを追求しています。



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by koukinobaaba | 2007-12-26 14:01 | 映画
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