イングマール・ベルイマン Ingmar Bergman

映画好きの私でも20世紀を代表する監督の一人として挙げられるスウェーデンのイングマール・ベルイマンの映画はあまり観ていません。

第二次世界大戦終戦直後に監督デビューしたイングマール・ベルイマンは2007年の7月に89歳で亡くなるまで独自のスタイルで数多くの作品の脚本と監督を担当しました。アカデミー賞以下いくつもの映画祭の賞も受賞しています。自身、華やかな女性遍歴を持つイングマール・ベルイマンは女性を描いた難解な作品群を監督したとされます。実生活でのパートナーであったリヴ・ウルマン(Liv Ullmann)と映画でも組んで仕事をしています。兎にも角にもイングマール・ベルイマンはスウェーデンが世界に誇る映画監督であることには間違いがありません。

※父親の職務で東京で出生したノルウェー女優であるリヴ・ウルマンはベルイマン映画の他に、テレンス・ヤングが監督した1970年のフランス映画「夜の訪問者(De la part des copains)」ではチャールズ・ブロンソンと夫婦役で出演しました。

”スウェーデン映画といえばベルイマン監督”の図式が出来上がりそうなのは、イングマール・ベルイマンが脚本を担当した1944年の映画「もだえ(Hets)」と1951年の「令嬢ジュリー(Fröken Julie)」のアルフ・シェーベルイ(Alf Sjöberg)や1967年に「Elvira Madigan(みじかくも美しく燃え)」のBo Widerberg(ボー・ウィデルベルイ)以外に有名な監督というと1993年にギルバート・グレイプ(What's Eating Gilbert Grape)を監督したLasse Hallstrom(ラッセ・ハルストレム)くらいしか一般に知られていないからでしょうか。

Audio-Visual Trivia内のラッセ・ハルストレム監督の映画には2000年のショコラ(Chocolat)、2005年のカサノバ(Casanova)やアンフィニッシュ・ライフ(An Unfinished Life)があります。

イングマール・ベルイマンというと1950年の「Medan staden sover」の原作者であるPer Anders Fogelström(ペール・アンデシュ・フーゲルストルム)の小説を映画化した1952年の「Monika the Story of a Bad Girl(不良少女モニカ)」を監督をしています。(ASIN: B00006JY50)
スウェーデン語の原題が”Sommaren med Monika”でイタリア語だと”Monica e il desiderio”というそうです。
原作の映画音楽はErik Nordgren(エリック・ノードグレン)です。
Sommaren med Monika (1952) - YouTube

おそらくベルリン国際映画祭の1958年度金熊賞を受賞した作品で、老医師の回想(回春)を描いてFranz Kafka(フランツ・カフカ)の「Der Process(審判)」のようなシーンもある1957年の”野いちご(Smultronstället 又はWild Strawberries)”あたりから日本でも一般に注目されたと思いますが、最も話題になったのは何と言っても1959年の「処女の泉(Jungfrukällan 又はThe Virgin Spring)」と、”神の沈黙”三部作と呼ばれた1作の1963年の「沈黙(Tystnaden 又はThe Silence)」です。これらは深く考察する名作としてよりも性的なシーンが注目されました。つまり、「処女の泉」では主題の聖母マリアや信仰、又は美しい森の風景ではなくイノセント(純真無垢)な処女の輪姦シーンが話題となりました。
1950年代から1960年にかけて「Fröken Julie(令嬢ジュリー)」をはじめ「Det sjunde inseglet(第七の封印)」、「Smultronstället(野いちご)」、「Jungfrukällan(処女の泉)」、「Nära livet(女はそれを待っている)」など一連のベルイマン作品に出演したのはスウェーデン出身のMax Von Sydow(マックス・フォン・シドー)でした。1960年代中頃からアメリカに渡り「The Exorcist(エクソシスト)」で評価を得て、「Dreamscape(ドリームスケープ) 」や「Needful Things(ニードフル・シングス) 」などアメリカ映画に数多く出演していますが、美貌のYvette Mimieux(イヴェット・ミミュー)と出演した1965年の「The Reward(メキシコで死ね)」でアメリカの冒険家として主演していますが、小児殺人容疑で賞金をかけられたお尋ね者(エフレム・ジンバリスト・ジュニア)は意外です。

旧約聖書のヨハネの黙示録に記された7つの徴(The Seventh Seal)をテーマにした「第七の封印」は「沈黙」と共に難解な映画と言われていています。「第七の封印」で主演したMax Von Sydow(マックス・フォン・シドー)は「野いちご」でガソリンスタンドの男を演じています。
第四の封印である黒死病(ペスト)が蔓延し始めた中世を時代背景とし、冒頭に死とチェスをする騎士の従者が宿への道を尋ねた男が返事をしないので顔を見るとドクロだったからってホラー映画ではありません。幻想的かつ宗教的なモノクロ映画ですが以外とコメディ風。
お迎えに現れた死神に自分の得意なチェスを挑んで、命を賭けたゲームで死を逃れようとする鎖帷子を着た十字軍の騎士アントニウス・ブロックを中心に話は展開する。
加冶屋の女房を寝とった役者が亭主の怒りを静めるために自殺の装った役者を死神は許さなかった。 
死を引き延ばそうとしている騎士がチェスの手の内を話した神父様が死神だったなんて。
冒頭で御子を連れた聖母マリアの幻覚を見た旅芸人はラストで騎士と従者ら一行が鎌を手に下死神に引かれる死の踊りを目撃します。
聖地エルサレムを奪還せんとイスラムに聖戦を挑んだキリスト教のパレスチナ遠征でしたが現在はそれと異なるイスラムの聖戦が世界中で話題となっています。
※誰も死を免れないという点では以前テレビで観た「ミステリーゾーン(Twilight Zone)」のエピソード「Nothing in the Dark(死神の訪れ)」を思い出しました。誰にもドアを開けず死を受け入れない老婆が最後には雪倒れの若い警官を家に入れる(死を迎え入れる)という話でした。

姉妹の確執を描いた「沈黙」では不条理劇でも神の不在論でもなく、主演のイングリッド・チューリン(Ingrid Thulin)の自慰シーンが妹のご乱行シーンともにポルノとして扱われた経緯があったそうです。文字の読めない子供は大人の本の挿絵を覗きます。
そういえば1961年にドイツのゴットフリード・ラインハルト(Gottfried Reinhardt)が監督したアメリカの法廷劇「非情の町(Town Without Pity)」もレイプシーンが前面に出てしまったこともありました。
イングマール・ベルイマン監督の「野いちご 」や「女はそれを待っている」の他にヴィンセント・ミネリ監督の「黙示録の四騎士」などにも出演した美貌のイングリッド・チューリンの映画では1969年にLuchino Visconti(ルキノ・ヴィスコンティ)が監督した「La caduta degli dei(地獄に堕ちた勇者ども)」での自分の息子に陵辱される母親役が凄まじかったです。

これらのベルイマン作品が公開された50年代や60年代の時期にはアメリカの豪華絢爛なハリウッド映画やアメリカン・アイドル青春映画が全盛だったとはいえ、フランスのヌーヴェル・ヴァーグやイタリアのネオ・レアリズモと平行して、深い感銘を与えるドイツやポーランドなどのヨーロッパ映画もかなりの本数が上映されていたと記憶しています。

☆インタビューで芸術について語るイングマール・ベルイマン(英語)
Ingmar Bergman Interviewer - YouTube




The Virgin Spring
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※イングリッド・チューリン以外で有名なスウェーデン出身やスウェーデン系の俳優にはトロイ・ドナヒュー(Troy Donahue)がいます。北欧美人の女優はたくさんいて、グレタ・ガルボ(Greta Garbo)、サンドラ・ディー(Sandra Dee)、ユマ・サーマン(Uma Thurman)、アニタ・エクバーグ(Anita Ekberg)やEwa Aulin(エヴァ・オーリン)などいますが、アメリカ風にイングリッド・バーグマンと呼ばれている”Ingrid Bergman”は本国のスウェーデンではベルイマンです。

ベルイマン (Century Books―人と思想)
演劇人としてのベルイマンを理解せんと、彼の宗教や芸術や社会や人間に関する思想が書かれた小松 弘 (著) の単行本でも読んでみようか。



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by koukinobaaba | 2007-12-18 00:06 | 映画
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