必殺の一弾 The Fastest Gun Alive (1956)

1956年の西部劇映画にそれらしき題名の「The Fastest Gun Alive(必殺の一弾)」というのがあります。

1959年にロック・ハドソンとドリス・デイが出演したマイケル・ゴードン監督のラブコメ「夜を楽しく(Pillow Talk)」の原作者でもあるRussell Rouse(ラッセル・ラウズ)が監督しました。

主演は早撃ち名人に渋いグレン・フォード(Glenn Ford)で、共演は1949年の「オール・ザ・キングスメン」で悪徳政治家を熱演したブロデリック・クロフォード(Broderick Crawford)が決闘を挑む強盗団のボス役で登場します。
他にも1949年に「A Letter to Three Wives(三人の妻への手紙)」で主演したJeanne Crain(ジーン・クレイン)がジョージの妻役で、そして「ウエスト・サイド物語(West Side Story)」でジェット団のリーダーを演じたRuss Tamblyn(ラス・タンブリン)がEric Doolittle(エリック・ドリトル)を演じました。この時タンブリンは22歳ですがそのわりには子供っぽく見えます。

コインやビールジョッキは早撃ちだけど人間を撃ったことがない主人公にハラハラします。
脂汗を滴らせた恐怖の果し合いの後には二人の墓が立てられたのでした。
しかしこれにはわけが。。。  早撃ちといったって人殺しではないのです。
永遠の西部劇、というよりも人間ドラマの名作です。

Fastest Gun Alive
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以下のあらすじは驚くべきラストも書かれていますから、これからビデオをご覧になる方は読まない方が楽しめます。
映画の冒頭はブロデリック・クロフォードが演じる早撃ち自慢のヴィニー(Vinnie Harold)を真ん中に馬に乗った3人の男が荒野を行くシーンです。 目的地は早撃ちがいるというミネソタ州のシルヴァーラピッズ(Silver Rapids)。 とある酒場からヴィニーの呼びかけに答えて現れたのはトップガンと噂に聞いたWalter Coy(ウォルター・コイ)が演じるClint Fallon(クリント・ファロン)。 この決闘は電光石火のヴィニーの早撃ちであっという間に勝負がついた。 そこに居合わせた盲目の男がヴィニーに言うには「お前がいくら早撃ちでも、世の中にはもっと早い奴がいるものさ。」 それは聴き捨てならぬとヴィニーは自分よりも凄腕のその早撃ちを探しに出かけるのです。
ヴィニーのような無法者は自分より強い者の存在を許しません。丁度、剣豪が自分より腕が立つと聞くと自分の強さを確信するために果し合いを申し込まざるを得ないような状況なのです。

一方アラバマのクロスクリーク(Cross Creek)では一人荒野で射撃の練習をする男がいた。 それがグレン・フォードが演じるジョージ(George Temple)なのです。ジョージは打ち終わると拳銃を腰に着けず、それをくるむと荷馬車に乗せてその場を去ります。つまり、ジョージは丸腰という次第です。
それなのに藪から棒、いや、茂みから覆面をして待ち伏せしていた奴がいたのです。 バン!バン!
落ち着いたジョージはそいつをハッカアメで取引して家まで荷車に乗せてやったのです。
町に着くとジョージは人々に気付かれないように上着の下に銃の包みを隠し、自分の雑貨屋に帰ります。どうやら拳銃の練習のことは妊娠中の妻には内緒のようです。

酒場では町の人々がダンスパーティを楽しんでいるシーンで若いエリック(ミュージカル出身のラス・タンブリン)が請われてダンスを披露します。スコップを竹馬のように乗りこなしたりシーソー代わりにして2階まで飛び上がる身の軽さはさすがなんですがラス・タンブリンがGene Kelly(ジーン・ケリー)とは違ってちょっと素人っぽいのでアクロバティックなダンスにハラハラします。
Dancing Russ Tamblyn in Fastest Gun Alive - YouTube

その頃、早うちヴィニーの噂が街にも広まりました。ジョージの雑貨店ではシルヴァーラピッズでの決闘の証人が男たちにヴィニーのうわさ話を聞かせて盛り上がっているのが気に食わないジョージは皆を追い出します。そのことやご婦人の商品へのクレームなどで気が高ぶったジョージは酒場に出かけてウィスキーを注文したのです。酒場で酔った男たちが歴代の早撃ちを話題にし腕前を自慢し合った末、銃を所持しない雑貨屋のジョージを臆病者呼ばわりしたのです。堪忍袋の緒が切れたジョージは酒の勢いも手伝って銃を腰に付けた男たちを前に驚くべきガン・トークをおっぱじめます。いかにして早く銃を抜くかについてのウンチクを垂れた後に公言したのです。 「俺こそは世界一の早撃ちだ。」

いつも丸腰のジョージは何年もの間、毎日6時間の練習を積んでいることを話します。
「俺がどんな人間か分るか?ビリーザキッドよりも早撃ちなんだ。証明してやるから銃をよこせ。」
しかし町の男たちはジョージが酔っ払っているとして誰も銃を貸しません。
興奮したジョージは家に戻るとしまって置いた例の拳銃を引きずり出します。ガンホルダーを腰に着け拳銃に弾を込めているところに妻が入ってきます。「銃はとっくの昔に捨てた筈でしょう。子供も生まれることだしクロスクリークでの生活を大事にして。」と過去にジョージのやったことで住んでいた町を追われたことを指摘して止める妻に、「女のドレスだのキャンディーなんてもうウンザリだ!」と言い捨てるとジョージは家を出ていってしまいます。銃を腰につけたジョージが通りを歩くのを見て人々はビックリ。
酒場に戻ると男たちに自分の銃を見せて腰抜け出ないことを示します。「面倒はごめんだよ。」という酒場の店主から1ドル硬貨を2枚借りるとジョージたちは表に出ます。誰がこの銀貨を同時に空に投げるか、Leif Erickson(リーフ・エリクソン)が演じるLou Glover(ルー)とエリックがその役を引き受けました。
ワン、ツー、スリー!
銀貨が投げられると続けざまにジョージが撃ちます。落ちた2枚のコインのど真ん中に穴があいていました。
Allyn Joslyn(アリン・ジョスリン)が演じるHarvey Maxwell(ハーヴェイ)に「どうだ、分ったか!」とジョージは誇らしげに言ったのです。
それを見ていた妻はいたたまれません。「またやってしまったのね。」
ジョージはハーヴェイが手にしていたビールジョッキを好きな時に地面に落とせと言います。
ハーヴェイがジョッキを手から離すやいなやジョージの早撃ちでジョッキはコナゴナに砕け散ったのです。
「トップガンはジョージ・テンプルだ!」と酒場ではジョージを囲んで男たちが盛り上がります。銃身を調べた男たちによればジョージは一時に6人を撃てることが判明。 まさに、現存する早撃ち名人ナンバーワン!

場面は変わってユタ州のYellow Fork(イェロー・フォーク)では、例の早うちヴィニーの3人組が銀行強盗を働いた際にホールドアップさせた男の一人を撃ってしまう。それがついてないことに町の保安官の弟だったのです。弟を殺されたイェロー・フォークの保安官ビルの一行は何日かかろうとヴィニーを捕らえると後を追い始めます。

一方早撃ちを自慢するために銃を手にしたジョージを過去の過ちを引き合いに出して妻は責めます。4年間住み慣れたシルヴァーラピッズを明日には出て行こうというジョージに、「私はもう逃げ回るのは嫌。」と妻はきっぱりと言うのです。

一緒に町を出ようと説得するジョージ。そんなジョージのために祈りを捧げに教会へと出かけた妻。その妻を追ってジョージも教会へ、しかし、銃を手にして。ジョージはその銃を牧師に渡すと、二度と銃は使わないことと町を出ることを告げたのです。なぜなら昨日のことが知れると悪い奴やが対決を求めてやって来てはこのような静かな町を滅ぼしてしまうことになるからです。教会にいた人々の半数は昨日の出来事を手紙に書いてしまっていたのです。「これで一緒に来てくれるね。」というジョージに妻は応えます。
教会にいたルーはジョージを引きとめようと人々に呼びかけますがハーヴェイはトップガン(早撃ち)は人の知るところとなりよそ者がやって来ては対決しようとして面倒をもたらすと反対します。だがそのハーヴェイをはじめ教会に居合わせた人々がジョージが昨日やったことを秘密にすると誓いを立ててジョージは留まることになります。ただ妻はジョージが人々に全てを話していないことを懸念しています。

人々が次々と誓いを立てているその日曜日の朝、ヴィニーたちが町にたどり着き例の酒場に入ってきます。
そこにいたのはジョージが早撃ちだと知って驚いた少年でした。だからヴィニーが一番の早撃ちだと仲間が言っても首を横に振るのです。そしてど真ん中に穴の開いたコインを見せてしまいます。

親分は気まぐれで早撃ちだが、この町のトップガンが誰だかを教えれば皆は安全だとヴィニーの仲間が人々に告げます。少年が人質に取られていることを知った人々ですがどうすることも出来ずただ賛美歌を歌うだけ。業を煮やしたヴィニーは教会に使いを出し町の人々に伝えます。
「かっきり5分以内にトップガンが現れなければ町を焼き払う。」
もう一人のヴィニーの仲間は命じられるまま灯油をまき始めます。自分たちの生活が危うくなっていることを目の当たりに見た人々はジョージを詰め寄るのです。この町はジョージの手にあるのだと。町を救うためにヴィニーと対決するように説得しても応じないジョージを妻が説明します。「彼は怖いのよ。」 人々は予期せぬ告白に驚愕の表情を表します。
「そう、私は怖い。」 ジョージは本名を明かし訳を説明します。 George Kelby, Jr.
射撃名人で名高い保安官のジョージ・ケルビーの息子だったのです。 父はジョージに技の全てを教え込み息子のジョージは父を超える腕前になりました。 しかし、早撃ちだったがために父親の保安官は撃たれたのです。 その後、ジョージは闘うより逃れる道を選んだのでした。 つまりジョージはこれまで人を撃ったことはない。

ヴィニーの子分が松明に火をつけたのを見たルーはもう堪え切れずに祭壇に置いてあったジョージの拳銃を掴むとと叫んだのです。 「今、行くぞ!」
ルーはジョージの滞在を説得した責任があるからと言いますが、これはルーの死を意味します。ルーがヴィニーに勝てるわけはないのですから。
そこで決心したジョージはジャケットを脱ぐと自分の拳銃をルーの手から取り上げたのです。
「恐ろしいと言ってただろう。」と言うルーに「何も言うな。」

群集に恐れを抱いた子分たちはヴィニーから銀行強盗の分け前も貰えずに馬に乗って逃げ去りました。
二丁拳銃のヴィニーはジョージと対決すべく表通りに出て来ます。 行き詰る決闘の一瞬。

ヴィニーたちを追ってきたイェロー・フォークの保安官一行がクロスクリークに到着しました。
ヴィニーの二人の子分の屍を馬の背に乗せて。そして見たのです。町の人々が埋葬しているのを。
それも二つ。 町の人々は保安官に説明しました。

George Kelby Jr.: He was The Fastest Gun Alive

Here Lies
George Kelby Jr. was killed by Vinnie Harold

Here Lies
Vinnie Harold was killed by George Kelby Jr.

「ジョージ・ケルビー・ジュニア、ここに眠る」 「ヴィニー・ハロルド、ここに眠る」
「ジョージ・ケルビー・ジュニアは最高の早撃ちだったがヴィニーの対決で相撃ちで死んだ。」
Glenn Ford Tribute - YouTube


The Fastest Gun Alive [Original Motion Picture Soundtrack]
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「必殺の一弾」のサウンドトラックは西海岸派のジャズピアニストであるアンドレ・プレヴィン(André Previn)ですが、サン・クェンティン刑務所を舞台にJack Palance(ジャック・パランス)が凶暴犯と脱獄を助ける兄の二役を演じ、同じくラッセル・ラウズ監督とアンドレ・プレヴィンがコンビを組んだ1957年の映画「House of Numbers(0(ゼロ)番号の家)」のサントラと抱き合わせたCD(FSM 7-7)もあります。
全25曲試聴はBarnes & Noble.com


ユダヤ系ドイツ人のピアニストのアンドレ・プレヴィンは西海岸派のバリトンサックス奏者のジェリー・マリガンと共演した1960年のビートニクの映画「地下街の住人」、1965年にナタリー・ウッドが主演した「サンセット物語」、又1969年の西部劇ミュージカルのペンチャー・ワゴンなど沢山の映画音楽を手掛けています。

¡Three Amigos!
ちなみに1986年にJohn Landis(ジョン・ランディス)が監督した「サボテン・ブラザース」という映画では、虚構(映画のなかの映画)と現実の取り違えでメキシコにある町を救うための用心棒として3人組の俳優を呼び寄せるというストーリーです。
現在はThe Pink Panther(ピンクパンサー)シリーズなどコメディ界で大活躍のSteve Martin(スティーヴ・マーティン)が主演しています。
Three Amigos - YouTube

Glenn Ford (1916 – 2006)
私が始めてグレン・フォードを見たのがロックンロールを取り入れた1955年の青春映画「Blackboard Jungle(暴力教室)」でしたが、その後に1940年代にRita Hayworth(リタ・ヘイワース)と共演した「Gilda(ギルダ)」や「The Loves of Carmen(カルメン)」を見ました。
1950年代には西部劇、1960年代には「Love Is A Ball(プレイガール陥落す)」といった軽い軽いコメディ映画にも出演していますが、グレンがサングラスまでかけちゃって舞台がリビエラのロマコメなんて!この映画への出演はどうも納得できません。(60年代には噂のあったホープ・ラングと共演だから?)
1940年代から50年代中頃までは名作揃いだったシャルル・ボワイエもこの一時期には代わり映えのしない映画に出演し過ぎ。
ヨーロッパ貴族にお弱いアメリカ上流階級を相手に結婚斡旋で生活を立てているシャルル・ボワイエのターゲットはTelly Savalas(テリー・サヴァラス)が演じるグルメな紳士で裕福な姪っ子(ホープ)の親権者、厄介な姪を片付けたいので話に乗った。
予定していた運転手が怪我をしたので結婚相手になる予定のボンクラ男を助けるべく代理の運転手役を頼まれたのが元カーレーサーのグレンです。じゃじゃ馬のホープが期せずしてその運転手と恋に落ちてしまうというお手盛り的なストーリー。(ね、ツマンないでしょ。)

四度の結婚離婚を繰り返した割には普通の真面目タイプを演じたカナダ出身のグレンフォードですが全体的に活劇が多い俳優です。
1978年に催眠術の実験(カルフォルニア大学に資料を送った)を受けた時にコロラドのカウボーイになりましたが、二度目の実験ではスコットランドのピアニストだったそうで本当に知らないはずのピアノを弾いたそうです。



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by koukinobaaba | 2007-10-21 14:36 | 映画
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