ホワイトマサイ Die Weisse Massai (2005)

「ホワイトマサイ。。。The White Massai」

”サバンナの戦士”と呼ばれるアフリカのケニヤのマサイ族は山川惣治著の「少年ケニヤ」でワタルを助けた老酋長のゼガ(セガ)で半世紀も前に日本でも知られていますが、ホワイトマサイはどうでしょう。
ホワイトマサイとはドイツ人のHermine Huntgeburth(ヘルミーネ・フントゥゲボールト)が監督した 2005年のドイツ映画で「Die weisse Massai 」のことです。

「白人ケイトにはならなかった白人カローラ」
映画「Die weisse Massai 」はひとりの白人女性がスイスからアフリカへ休暇で訪れて誇り高きマサイ族と同族および同言語のサンブル(Samburu)の戦士(モラン)と出会って今までになく運命を感じたほど魅せられたというストーリーです。原作ではドイツ人ですが映画ではスイス人で結婚したのはマサイでもサンブルの戦士です。原作では当然自分本位に書かれているそうですが映画ではサンブル戦士にも理があるように描かれています。
サンブルとは身につけたその美しい装飾品からまるで蝶のようだと他の部族から呼ばれたのだとか。
映画のヒロインは赤道直下のサンブル地区でマサイ族に似た放牧生活をするサンブルの戦士と暮らすようになったのです。
農業は卑しむべきと考えるサンブル族は主食が飲んでも減らない牛の乳と血だそうですから、最近はウガリにカラバッシュ(牛の血入りミルク)を常食とするマサイ族に民族的に類似しています。
故国スイスで経営していた店を処分して、サンブルの戦士と結婚した女性はバルサロイで生活しながら村にはなかったピックアップ・トラックを購入し食品店も開きました。

白人のカローラはチャット(Khat)依存による副作用なのか、夫のいわれなき猜疑心に悩み、伝統的な割礼の儀式に驚愕しながらも文化の違いにめげずにサンブルの生活に馴染もうとしました。
サンブルの男には商売とはいえ夫以外の男に愛想をふりまくなんて我慢ならないことだったのです。(夫以外の男性を見るな。夫以外の男性に笑顔を見せるな。)
ドアが開けっ放しというだけで今ここに男がいたなどという妄想を抱くようになったレマリアンはカローラのお腹の子供も誰か他の男のだろうとまで言い出すのです。

The Samburu moran from Barsaloi;
Lemalian Mamutelil played by Jacky Ido
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「あらすじ」
映画の冒頭は2年間交際してきた恋人と2週間の予定でケニア旅行した白人女性が浜辺で寝転んで回想する台詞から始まる。
「マサイは投獄されたら死を選ぶだろう、この状況が変わることなど想像できないから。マサイには未来や過去もなく現在を生きるのみ。私がこれを理解するのには余りにも時間がかかり過ぎた。」といった趣旨だったと思うが、これはきっと独自の世界観を持つ世界でも稀なマサイの精神構造について述べているのではないかと思った。聞くところによれば、愛する人がライオンに食われそうになっていても「ライオンと戦うのは無理だから去る。」と今時の某マサイ戦士が言ったとか。(部落の人々と家畜を守る役目の戦士はその昔、長老になる前の編んだ長い髪のうちは結婚もせず、牛などの家畜を襲うライオンや豹と長槍で戦ったのに。。。今じゃライオンは国立公園に保護されてるか。高原の貴族と呼ばれたプライドの高いマサイ族の狩猟地域はナイロビ、マサイマラ、セレンゲティ、そしてサンブルなどが動物保護区や国立公園などに指定されてしまった。遊牧民が定住を強いられるなんて!)

ヨーロッパからやってきたカップルがモンバサからケニヤに行く船に乗り込むシーンからストーリーが展開します。黒いアフリカ人だらけの船上でカローラの恋人がひときわ目立つマサイの戦士を見つけました。この時、距離を隔てて見つめ合った二人はどうやら一目惚れをしたようです。そう、これが世の人々がいう「人生には全てを変えてしまう瞬間がある。」ってやつかも。
写真撮影にも笑顔で応じてくれた。。。マサイってカメラが大嫌いじゃなかったかね。
赤い腰布をまとい頭に羽飾りを付けたフードに耳輪、髪が赤土(黄土)で固めた細長いブレードといった伝統的な戦士の正装をした精悍なアフリカ青年のレマリアンです。髪を凝って結い上げている戦士たちは牧畜に寝る時は動物の骨か枝で作った高枕をします。(日本髪で寝る時代の枕みたい。)
アフリカ東部のケニアではスワヒリ語と英語が公用語だそうですが、映画では戦士のレマリアンは町の中やカローラにはサンブル語ではなく英語で話します。

さて、上陸してすぐにカローラの恋人がケニア旅行の最後にと麻薬を入手するために接触した黒人が仲間を集めてきたので身の危険を察知したカップルは逃げました。悪党どもに追われ市場に逃げ込んだカップルがぶち当たったのが船上のマサイの戦士でした。悪党どもは戦士姿のレマリアン一行を見て恐れをなしたか散っていきました。レマリアンとその仲間はちょくちょく町にやって来るようですが何をしにくるのでしょう。
「ジャンボ、どうかしましたか?」とレマリアンは尋ねましたがカローラの恋人は今度は麻薬じゃなくて帰りのフェリー乗り場を聞きました。
バスに乗り遅れたカップルを呼び止めたのは又もやレマリアンでした。「我々と一緒に行こう。」と小型の乗り合いバスに誘います。恋人の制止も聞かず、レマリアンに気のあったカローラはそのお礼にと飲み物をごちそうすることにし、ダンスまで誘ったのでした。踊りにも応じるなんてずいぶんとさばけたマサイの戦士、カローラはこの時点でもうレマリアンの魅力に完全に取り付かれていました。
踊りながら見つめ合うカローラとレマリアンは運命の赤い糸を感じているようです。言葉の壁のせいでしょう、ニンマリとはするけど口数の少ないレマリアンはカローラと目で語ります。

追いかけてきた恋人に仲を裂かれたもののレマリアンを忘れられないカローラは帰国の途につく直前に恋人に一緒に帰らないと言いました。カローラの恋人は「あれは観光客の相手をするマサイなんだ。君はただやりたいだけじゃないか。」となじったのです。(実際に遊牧生活がままならないので現金収入を得るため観光ガイドをしているマサイもいるとか。)
この言葉が決定打かどうかは不明ですがカローラは恋人と別れてアフリカに残る決心をしました。
その時にはレマリアンはサンブル地区のバルサロイ村に帰ってしまったと聞いたカローラはサンブル地区に探しに行くことにしました。ナイロビからバスでケニアの北部にあるマラライ(Maralal)まで砂漠を走ると窓から赤い腰布をつけたサンブル族が放牧しているのが見えます。マラライの人々に写真屋が撮ってくれたカローラとレマリアンの写真を見せても誰も知らなかったのでレマリアンの仲間から聞いたKatja Flint(カティア・フリント)が演じるドイツ人のエリザベスを訪ねます。
エリザベスからケニア人との結婚生活について色々と話を聞き二人は意気投合しました。10日経過した晩のこと、カローラが探していることを聞き知ったレマリアンがやって来ました。二人が見つめ合うシーンはロマンチック、月明かりの夜、レマリアンについて行くカローラはまるで別世界に入っていくかのようです。でもその後のいきなりの背後からの攻めはショック。「なに、これ。」と思ったか「戻って来る?」というレマリアンの言葉に無言だったカローラでした。
しかしレマリアンの次の言葉「うち、来る?」には、こんな異文化も悪くはなないと思ったらしく、カローラはエリザベス夫妻の家を出て電気も水道もなく赤土だけのレマリアンの住む村に向かいます。野越え山越え険しい岩山を登り。

サンブル族はけして後ろを振り向かない。なぜなら災いを招くから。

昔の(今も?)マサイの住居は牛糞で作られていましたが、サンブルでは牛の皮で覆った家に迎え入れられレマリアンの家族に紹介されますがカローラは最初言葉が分からず笑顔で自分の名前を連発するのみ。
屠ったヤギの血を儀式のように仲間の戦士たちと啜るレマリアンを見たカローラはショックを受けますが、マラリアにも冒されたカローラにはこんなもんは序の口で、まだまだ文化の違いは続きます。レマリアンがガムを噛むかのように常用している薬草はチャット又はミラ(Miraa)と呼ばれる麻薬でした。

もはや旅行者ではないカローラはレマリアンとサンブルに住むため登録をしにナイロビのニャヨ・ハウス(出入国管理局のあるビル)に行きました。この役所の入り口で、伝統的な戦士姿のレマリアンは服装チェックをされてしまったので驚きます。もっとも戦士は上半身裸でパンツを履いていないだけじゃなく山刀などの武器を所持してますから。
この後、カローラは身辺の整理をしにスイスに戻ります。結婚しようと言うレマリアンに必ず戻ると約束して。
言葉通りに2週間後にお土産をいっぱい持ってカローラはサンブルに帰ってきました。

スイスで経営していた店を処分したカローラはバルサロイで食料品店を開きますが、夫が家族や友達にツケで買い物をさせていたので商売になりません。なにしろこの村は全員が家族友人ご近所さんなのです。
おまけに煩い村の小役人にそれを嗅ぎ付けられツケを強要されてしまったのです。村の人々は言いなりになったり賄賂をやったりして安全を買ったつもりです。次に役人は許可証なしに営業していると脅してまだ子供で役立たずの甥を無理矢理雇わせました。

身籠ったカローラは出産時に難産で赤十字の飛行機で病院に行き女児を出産しましたが、無事に生まれた赤ちゃんを見たレマリアンは自分の子供であると確信しました。(産まれた子が白かったら大変。) しかし、ケニアの文化なのかレマリアンだけなのかは不明ですが、カローラの妊娠中や産後の思いやりが皆無なので驚きます。 お産でも女性に課せられた家事労働を戦士たるものが手伝うことはないのです。

この後、いやいや雇っていた小役人の甥をめぐって災難が起きます。
少年はさぼって店のビールを飲んだりするので業を煮やしたカローラがクビにしたのです。その仕返しとばかりに少年はナイフを手にカローラを襲ったのです。戦士である夫のレマリアンが激怒して散々に殴りつけたので村の裁判で慰謝料を請求されてしまいます。ヤギ5頭。それに少年をクビにしたのでヤギ2頭。

その後も妻が客と密通していると思い込んでいるレマリアンの妄想はひどくなりカローラを売春婦呼ばわりした挙げ句にその男を殺してやるといきり立つのです。レマリアンは狂ったように戦士の長いブレードを切りTシャツを来てカローラの店に現れたのです。「これなら俺を尊敬するか!」
戦士の象徴である長いブレードを勝手に切るなんて!もう駄目だとカローラは思ったのでしょう。
この後、カローラはスイスの母親が孫を見たいというからと娘を連れて2週間の休暇旅行に行くことをレマリアンに告げます。懐疑的なレマリアンは何度も「戻ってくるんだろうな。」と念を押しました。カローラがスイスの店を処分して結婚するために帰国した時と同じ言葉です。
しかし、バスのドアが閉まる直前にレマリアンは「もう戻ってこないことは分かっている。」と言ったのです。
二人とも愛し合っているのにも関わらず悲しい選択となりました。

互いの文化の違いをどう埋めていくかはその人次第。上手くやるには郷に入れば郷に従うでしょうか。
他国で長年行われてきた伝統を自分のスタイルに変えようとすることは不可能です。
赤を基調としたサンブルの女性のコスチュームはアフリカで一番美しいといわれていますが、カローラは結婚式に白いヴェールにウェディングという西洋風でした。
カローラとレマリアンが結婚する日に20年間現地で生活してきた白人神父が教えてくれたのは、「サンブルでは白に二つの意味がある。一つは我々同様に純粋や純血を表すが一方夜に起こる厄災という意味もあるのだ。サンブルではオール or ナッシング、つまり全てを受け入れなければならない、中途半端じゃ駄目なんだ。ここでは掟が一番大事だから貴女は何も無理強いすることはできない。それを理解しなかればサンブルにはいられないのだ。」
そして、ドイツ女性のエリザベスはカローラがレマリアンと皆のためにと言って食料品店を開く時に「ここはスイスじゃないわ、貴女は自分のためにやるのよ。一見普通の女性に見えるけど強すぎる人ね。」と言ったのでした。
あまりにも違った環境で育った人間が互いに歩み寄ることも出来ないほどの文化の違いに熱烈な愛情を冷やし次第に深い溝を作ってしまう、国際結婚が難しい所以でしょうか。


Der weiße Massai(The White Massai)
スイスのCorinne Hofmann(コリンヌ・ホフマン)原作のミリオンセラーの自伝的小説「マサイの恋人(ヴァイスマサイ )」を映画化ではスイス人女性のカローラをドイツ人女優のNina Hoss(ニーナ・ホス)が、サンブルの戦士を西アフリカ出身で当時27歳のフランス人俳優のJacky Ido(ジャッキー・イド)が演じています。
「ホワイトマサイ」のトレーラーはDie Weisse Massai trailer - IMDb

Die Weisse Massai Soundtrack
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「ホワイトマサイ」のストーリーを追ったサウンドトラックの試聴
Die Weisse Massai Soundtrack - Amazon.fr

2000年の「Pünktchen und Anton(点子ちゃんとアントン)」や1996年の「Jenseits der Stille(ビヨンド・サイレンス)」のサントラも手がけたドイツの作曲家であるNiki Reiser(ニキ・ ライザー)の音楽19曲を収録しています。
アフリカの打楽器を取り入れたテーマ曲”Die Weisse Massai(ホワイトマサイ)”をはじめ、現地語で歌う”Malaria(マラリア)”や”Der Lange Weg(長い道)”など全19曲を収録しています。
道ばたで難儀している妊婦を助けたカローラは買ったばかりのトラックに乗せて病院に運んだが赤ん坊は手が先に出て結局は死産だった。このシーンで流れる”Totenlied(葬送歌)”は子供の歌声が胸をうつ。


Die weiße Massai by Corinne Hofmann
映画「Die Weisse Massai(ホワイトマサイ)」は日本で劇場未公開でDVDが販売されていませんが、書籍としては、映画の原作となった小説はコリーヌ・ホフマン著の「Die weisse Massai. Sonderausgabe.」のペーパーバックが日本でも販売されています。
1986年に実際に恋人とケニヤを旅行したスイスの女性が現地の男性と結婚し女児を儲けるも諸事情により1990年に帰国して書いた実話的小説だそうです。続編2冊を出版しトリロジーとしたそうですが、その後の2004年にサンブルの家族と再会を果たしたそうです。




「マサイ戦士と結婚した永松真紀のブログ」
ところで、映画ではマサイ族の男性と結婚したのはスイス人でしたが、なんと、日本にもマサイ族と結婚した女性が存在していてブログを作成しています。2005年にマサイ戦士と伝統的な結婚式を挙げた旅行ガイドのプロである女性が2006年12月20日(水)から日記にしています。ブログのタイトルにある”第二夫人”というのはマサイ族は種族を残すために一夫多妻なんだそうです。それでは白人男性はマサイ族の夫になれるでしょうか。財産(牛)を持っていて、割礼の儀式を受けていれば可能性はあるそうです。あとはライオンを殺してくることぐらいだとか。

☆現在ブログ「マサイ族の第二夫人永松真紀のケニア・サバンナ日記」は移転しています。
http://masailand.blog25.fc2.com




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by koukinobaaba | 2011-09-23 19:21 | 映画
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