南京!南京! Nanjing Nanjing - City of Life and Death (2009)

私が偶然にツィッターで情報を得た中国映画に「Nanjing Nanjing (南京南京=ナンジン ナンジン)」があります。

4年がかりで史実を検証したLu Chuan(陸川=ルー・チュアンもしくはルー・チューアン)が脚本を書き監督した2009年の映画「南京!南京!」は、スペインサンセバスチャン国際映画祭や第53回ロンドンの映画祭でも賞賛を浴びたそうですから日本でも上映されるかもしれません。

私が子供の頃には「支那事変」として記憶にありましたが、1937年(昭和12年)から1945年(終戦)までの約8間に行われた大日本帝国と蒋介石政権時代の中華民国との戦争、いわゆる日中戦争(中国抗日战争)と呼ばれるものです。

b0002123_1374269.jpg
日本では未だ劇場公開されていませんが、2011年に「南京!南京! CITY OF LIFE AND DEATH」(2009)として輸入版(香港正規版) が販売されたようです。(北京語に英語字幕)(ASIN: B002UOKXNS


映画「南京!南京!」は1937年の12月、北京や上海が陥落した後、南京から逃走した国民党軍の残党が日本軍に抵抗したものの遂に南京は陥落し、その後に起こった南京大虐殺の惨劇をドキュメンタリー調のモノクロで描いた作品です。しかしドキュメンタリーなんかではなく、人間を描いたドラマです。

南京!南京! (2009)
映画の冒頭は南京城から逃がれようとする中国人兵士とそれを阻止する国民党軍の闘争、その後は日本軍の敗残兵捜索のシーンです。
教会堂の扉を開けると大勢のクリスチャンの信者たちに混じって武器を持った何人かの中国人兵士が潜んでいました。 「支那兵がいたぞ!」と仲間の兵隊を呼び寄せる日本人の兵隊。

リウ・イエが演じる陸剣雄を含む国民党軍の残党と角川を含む伊田が率いる日本軍の熾烈を極める攻防戦。
闘いが終わり倒れた大勢の兵士と市民ののなかを呆然と歩く角川は見た。
縄で縛られた中国人たち、戦略品をリヤカーに積み込む日本兵、中国人を銃殺する現場、全裸の死体や電柱からぶる下がる縛り首死体どころか首だけがぶら下がる木。(横棒に並んで高く吊り下げられた馬賊の打ち首写真は見たことがあるが。)
映画では敵兵の捜索の名目で、国際安全区だろうと重症患者がベッドに横たわる病院だろうと国際法を無視して乱入し無法の限りを尽くしたのです。(実際には安全区は某連隊が守ったとも聞いたが。)

ガスマスクの日本兵士の一団が捜索しているシーンがありましたが、このようなガスマスクは私の幼少時に我が家の押入れに入っていた記憶があります。 おそらく我が家にあったのは第二次世界大戦中に開発されたという潜水具のような緑がかったゴム製で薄気味の悪い民間用の防毒マスクだったと思いますが終戦後にもきっとどの家庭にも残っていたのかもしれません。

映画では兵士は殆どその場で日本兵に撃ち殺されますが、捕らわれた中国の市民は悲惨でした。縄で十羽一絡げにされたり、建物に封鎖された上に火をつけられ手榴弾まで投げ込んで焼き殺される。日本兵が銃剣で突き刺したり、一斉射撃で集団殺害、集団生き埋め、海に向かって歩かせ後方から射撃するなどと非道の限りを尽くします。なんとも民族闘争でも見ているかのようで、一般市民にこのようなひどいことをするなんて。銃と共に天皇陛下から賜ったはずの弾も撃ち放題に見えます。

中国軍の生き残り兵士の陸剣雄(リウ・イエが演じる)が後ろ手に縛られて連行されるシーンでは、これまで奮闘してきた陸剣雄を常に手助けしていた11歳という少年兵の小豆子(9歳のBin Liu=劉斌が演じる)が見せた笑顔が愛らしい。(親子なのか?兄弟なのか?) 監督談によれば、実はこの小豆子にはモデルがあるそうで監督が見た当時の1枚の写真から思いついたそうです。

角川は慰安所で内地(日本)から来たという売春婦の百合子(宮本裕子が演じる)と出会い自分が童貞を捧げた妻と心に決めたのでした。
日本軍が若い女性を暴行しているため女性たちは女性の命というべき長い髪を切ったのですが、日本でも同様で戦後の満州や樺太からの引き揚げ船では一見して女性に見えないようにとが断髪しました。

ご機嫌な日本兵たちが掛け合いの流行歌「二人は若い」を歌い興じていた時、一緒に笑っていた角川が見たものは御用済みの慰安婦を荷物のようにリヤカーに山積みにする図。そのなかに角川が贈ったアンクレット(クルス)を付けた百合子の足を見つけたのです。
1935年にサトウ・ハチローが作詞した「二人は若い」という歌謡曲は第二次世界大戦中には敵性語規制(カタカナ英語)のため姓を本名の漢字に変更を余儀なくされ上海でも活動したジャズ歌手の草分け的存在のディック・ミネの1930年代後期のデュエット曲でした。

ラストは「生きていくことは死ぬことよりも難しい。」と小豆子と父の親子(?)を解放した角川は姜淑雲を撃ったピストルで自分のコメカミを撃ち抜き自害しました。拳銃の音を聞いたものの自分たちが無事だと分かった親子でしたが、ここで小豆子の笑顔が戻りました。 タンポポの花と綿毛が舞う束の間の平和なシーンです。

映画「南京!南京!」では一人の日本人兵士が映画のすじを進める主人公となり彼の心理を通して戦争の悲惨を描いています。その主人公の日本兵で隊長(憲兵か)の角川正雄役を中泉英雄(Hideo Nakaizumi)が演じます。その角川隊長とは同郷で上官である日本陸軍第16師団所属の職業軍人の伊田少尉役の木幡竜や角川が妻と(勝ってに)想う百合子を演じた宮本裕子以外は日本兵役でもほぼ全員が中国の俳優です。
2010年の「仮面ライダー」で菊地宏を演じた俳優の中泉英雄だが、「南京!南京!」では日本兵士の雛形ともいえる角川役で日本軍の虐殺事件をテーマにした中国映画に出演した中泉英雄と木幡竜両名の勇気ある出演が話題となっています。
どういった経緯で日本人俳優にオファーがあったのか、それともオーディションだったのかは不明。

「南京!南京!」を監督した中国のルー・チュアンは2001年に脚本を手掛けたミステリードラマの「The Missing Gun(ミッシング・ガン)」でデビューし、2004年にも「Kekexili: Mountain Patrol(ココシリ)」を監督しています。 一方、南京で日本軍に抵抗した国民党のLu Jianxiong(陸剣雄)役で出演しているLiu Ye(劉燁=リウ・イエ) は眼で演じる俳優といわれ、Chow Yun-fat(周潤發=チョウ・ユンファ)やGong Li(鞏俐=コン・リー)と共演した2006年の「Curse of the Golden Flower(満城尽帯黄金甲=王妃の紋章」で長男王子を演じた中国人俳優です。

映画の音楽はTong Liu(トン・リウ)が作曲したそうですが、クラシック調や和風の太鼓と笛を主にした音楽が効果的に使用され緊張を盛り上げてています。


「南京!南京!」には正視できないほど悲惨な場面や涙する悲しい場面もたくさんあり、綺麗に描いていますが実際はこんなもんじゃなかったでしょう。
意味不明と賛否両論ある中で、私が鳥肌が立った場面の一つは終盤の日本兵の行列シーンです。
日本軍の合同戦没勇士慰霊祭でしょうか、占領した南京城への入場式でしょうか。
伊田の第16師団の他、各師団合同の祭りが行われ戦死者の白い遺骨箱を胸に日本兵が行進しました。 たくさんの中国人に混じってこの入場をあの少年兵も見ていたのです。
和太鼓を後ろ従えてに上官の井田から「お前は踊りが下手だからよく練習しておけよ。」と言われた角川を先頭に日本兵たちの鬼気迫る踊りは畏敬をも感じさせ、一見に値します。阿波踊りや安来節のようなこの踊る行列は1980年代に一世風靡セピアが行ったパフォーマンスの「前略、道の上より」みたいでもあります。
このようなシーンまで取り入れた中国人のルー・チュアン監督はただ者ではないと感じました。第一に政府の息でもかかってるのか、中国人でありながら日本兵の深層心理を描いているところがこれまででは有り得ません。残虐極まりない筈の伊田少尉が一目置いている中国人宣教師を開放するようにわざわざ取り計らったにもかかわらず自ら死を選んで処刑される場面で顔を背けたシーンや、ラストで角川大尉の自害を知ってか知らいでか海が見える高台でドラム缶風呂に浸かりながら故国を想うかのように海を眺めるシーンなど奥深い心理描写です。(世界でも通用するでしょうか)
4年もの資料の検証を試みた監督の調査結果がこのような映画、監督及び俳優陣が中国、日本共に若くて戦争の傷跡さえも体感していない世代だからでしょうか。いづれにせよ、この映画が世界的に公開されれば南京事件を知らなかった人々が日本人の蛮行を映像で観ることになるでしょう。
かって日本映画が東京の大空襲や原子爆弾投下の正当性を主張するアメリカ軍飛行士(カーチス・エマーソン・ルメイやエノラ・ゲイのポール・ティベッツなど)の側に立って映画を製作したことがあっただろうか。

最後に、この「南京!南京!」が日本で上映され、出演した中泉英雄と木幡竜が俳優として認められて今後日本の映画に出演できるようになりますように。。。それとももう帰国しないのか。


南京大虐殺 (The Rape of Nanjing) 1937年
終戦後すぐの極東国際軍事裁判でも取り上げられた南京大虐殺とは。
まず1927年の南京事件で共産党側の策謀かとも云われていますが蒋介石の国民革命軍が南京を占領した時に領事館と居留民を襲撃事件が起こりました。その後の中国や日本の方針を変えた事件だったそうです。
そして10年後に日本軍がおこした南京大虐殺が起きたのです。 実際には殺害された敵兵や捕虜や民間人(中国人)の数はいずれが正しいのかは不明ですが少なければよいというものではない。ともかくその数よりも、事実ならば一部(某連隊)の日本兵が行ったと伝えられた虐殺及び暴行に及んだ残忍性の方が口に出すのも恐ろしい出来事でした。しかし、なぜ、南京だけでこのような蛮行がと解せない一面もあります。
昔、私が南京事件の文献を垣間見た時には、子供ごころにもこれが人間のすることか、自分の親世代が行った蛮行かと信じられない思いでしたが、歴史や社会科の教科書では注釈で数行の扱いだったと記憶しています。
家庭では子煩悩だったに違いない父親たちが狂ってしまうほど過酷な戦争とは下に恐ろしきもので絶対にあってはならないと思いました。現在ではあまり眼にすることもありませんが、戦争直後には虐殺の数々の報道(新聞記事)が武勇伝のごとく語られたこともありました。いったいぜんたい鬼畜となった日本兵はどれほどいたのだろうか。
もっとも、そんな戦場に於いてもなお人道的な行動をとった人間だって存在したのです。 上官の命令は天皇陛下の命令であるという戦時下に於いては、上官の敵兵(捕虜)射殺命令を拒んで軍法会議にかけられ処刑、もしくは上官の逆鱗に触れてその場で命を落とした日本兵も存在したのです。
南京大虐殺から74年後、生き証人がほぼ絶えた現在でさえ大量殺人が事実か捏造かと論議を呼んでいるのです。
ちなみに身内で戦争を経験した世代に聞いたところ「聞いたことがあるかも。。。」程度の認識でしたが、私と同世代だと「あれは「日中双方のプロパガンダで利用された出来事。」という見解もありました。そして私の子供たちの世代では「知らない。」という答え。

第二次世界大戦中に起きた南京事件に関する映画としては、1938年に徳川夢声が解説するドキュメンタリー映画の「南京」を日本がリアルタイムで制作しました。
南京大虐殺をテーマにしたドラマ(映画)では1995年に早乙女愛が出演した「Don't cry, Nanking(南京1937)」があります。これは中国のWu Ziniu(呉子牛=ウー・ツーニウ)監督で、香港と台湾と日本の合作でした。
2009年の「南京!南京!」に続いて、2012年にはイギリス俳優のChristian Bale(クリスチャン・ベール)がアメリカの宣教師役(?)で主演する「13 Flowers of Nanjing(Nanjing Heroes)」を1987年に「紅いコーリャン(紅高梁=Red Sorghum)」を監督したYimou Zhang(チャン・イーモウ)が監督するそうです。 挑戦状かな。


[PR]
by koukinobaaba | 2011-07-13 16:16 | 映画
<< デジアナ変換顛末記 サーバーで障害が発生 ブログに... >>